千葉県の九十九里浜に現れ、今月4日、水族館に保護されたメスのトド。衰弱しており生きられるかは5分5分だという。今回は助けられた形だが、本来北海道では、トドと人間はたがいに”食うか食われるか”の関係だ。
■トドは害獣
ネットを通じて北海道の業者から、「トドカレー」や「トド大和煮の缶詰」などはすぐに購入することができる。
トドは害獣とされていて、北海道や青森では網にかかった魚を横取りしたり、漁具をこわすなど年間10億円近くの漁業損失額を出している。
日本では1959年から駆除対象、60年代には航空自衛隊のF-86戦闘機での機銃掃射や、陸上自衛隊の12.7mm重機関銃M2、7.62mm小銃M1などによる実弾射撃により、駆除が行われていた。
■アメリカやロシアでは絶滅危惧種に指定
だがその頃には2万頭近くやってきていたトドも激減、現在は5000頭ほどまでに減少。アメリカやロシアでは絶滅危惧種に指定されており、日本での駆除も毎年116頭まで制限がかけられている。
■独自の臭みがクセになる味
そんな商業的/環境的対立をふくんだトドであるが、その肉は北海道では珍重されてきた。その肉はクセが強く、また脂を大量に食べると腹をくだす。だが、そこに妙味がある独自の肉が、地元の古い人たちには愛されてきた。
今回九十九里に漂着したトドも、場合によっては缶詰かレトルトカレーにされていた可能性もあるわけだが、そこはいたずらに「ひどい」といえる話でもないのである。保護されたからには助かって欲しいものだが。
蛇足だが、北海道のトド撃ち名人による猟の様子が田中康弘氏の『日本人は、どんな肉を食ってきたのか?』に詳しい。名人の老人による狩りが、あまりにワイルドでかっこいいのでオススメの一冊!
文/原田大