■ウルトラ怪獣をデザインした成田亨
『ウルトラQ』『ウルトラマン』などウルトラシリーズ初期をはじめ、怪獣やヒーローをデザインを手がけた彫刻家の成田亨(1929−2002)。“怪獣の父”とも呼ばれる男だ。
1967年にノーベル書房より刊行された『怪獣大全集4 怪獣の描き方教室 きみもさし絵画家になれるぞ』が復刊ドットコムより復刊、そこに掲載されている、成田の言葉は感動的だ。
我々が子供の頃に、恐怖しながらも心惹かれた怪獣たちには、彼独自の思想、子供たちへの思いがあったのだ。それが伝わってくるのが「怪獣と化けもの」(104頁)という文章。
■怪獣は生の象徴
成田は自身の信念として「ウルトラ怪獣は化けものにはしないということです。」と記している。
「怪獣というのは、悪い、にくらしいものであばれ回ってわれわれの街をこわしてしまうとしても、怪獣は生きているものです。しかも、現実の今日、どこかであばれるかも知れないという形でなければいけません。しかし、化けものというのは、死んだものの変形で、つまり人間の“死”というものに対する恐怖が形になったものです。これは健康に育つ、子供たちのために、決して、いいものではありません。」
怪獣はあくまで現実に近いものであり、同時に生を象徴したポジティブなものなのだ。
■子供たちに見せるべき強い存在
一方、化けものは死の象徴したものであり、だから「目が一つとか、三つとか、顔がただれているとか、身体の部分をこわして登場します。生理的に非常に不愉快です。」として、だから子どもたちに見せるわけには行かないとする。
そしてそれを子供たちに見せようとするのは「大人の資格がありません。」と断言している。そんな子供たちに見せるべき“力”を持った存在として、
「怪獣は、もっと、格好よくて、身体が変形されてるのは、生きるための武器で、強くはげしいのです」
かつて怪獣好きな子供だった自分たちだからこそ、この言葉はひびく。
同書には書名の通り、そんな怪獣たちの描き方が丁寧に描かれているし、また小松崎茂師のインタビューなども掲載されており、読み応え満点。また毎頁に掲載されている怪獣絵に心踊らせられる。子供にも大人にもすてきな一冊だ。
文/鷹村優