長崎発祥のご当地グルメ「トルコライス」。ピラフ、スパゲティ、とんかつを一つの皿に盛り付けたこの料理をPRするために、長崎市が3年前に制定した「トルコライスの日」(9月16日)が、トルコ政府の指摘を受け今年で廃止となった。
9月16日は、1890年トルコ(当時はオスマン帝国)の軍艦が遭難し乗組員が多数亡くなった日。流れ着いた生存者が日本で救護を受け69人が助かったことから、両国の友好が始まったとされている。長崎市はこの日を「友好の記念の日」と捉えて「トルコライスの日」としたのだそうだ。
しかし、トルコからみればこの日は多数の死者を出した事故が起きた「追悼の日」。好ましくない、と考えるのも当然の話で、今回の指摘へと繋がったようだ。この指摘を受けた直後、田上富久長崎市長は在日トルコ大使館を訪問し「配慮が足りなかった」として「トルコライスの日」を撤回したとのこと。
この「トルコライス」をめぐっては、今年5月にトルコの料理人に日本人が紹介した際、イスラムでは豚はタブー、と難色を示されたことが報じられ話題となっていた。こうした経緯があったことも、今回の指摘に繋がったのかもしれない。
「親日国」としてネットでも人気のあるトルコだけに、トルコの指摘に賛同する意見が殺到。「友好の料理で相手が禁忌にしてるものを食わすとか宣戦布告以外の何物でもねぇな相手国の文化習慣完全無視… 」「トルコに乗り込む前に普通気がつくだろ。ほんとうにバカばっかりでがっかりした」など、長崎市に対する厳しい書き込みが相次いだ。
ちなみに、指摘を受けたのは「トルコライスの日」がトルコにとって追悼の日なので、ということだけなので、トルコライス、という料理の名前については指摘をしていない。長崎のトルコライスを提供するレストランの店主たちは、記念日は無くても今後もPRしていくのだという。豚肉がイスラムの禁忌であることを考えるとこちらも改名すべき、という声もあるが、この点にまで踏み込まなかったのはトルコの大らかさゆえか。
※写真はWikipediaより
(文/蜂須賀和哉)