卑劣な犯行
あまりにショックな事件に言葉を失う。先月29日午後、千葉県流山市のコンビニで販売されていたパン3個のなかから針が見つかったというのだ。このコンビニの他にも、千葉県内のコンビニやスーパーで相次いで針の入ったパンやどら焼きが見つかっている。
今のところ(2日朝)けが人は出ていないことは不幸中の幸いだ。しかし犯人はまだ捕まっていない。消費者に、あの柔らかいパンを頬張ることをためらわせかねない卑劣なテロ行為に怒りを禁じ得ない。1日も早く犯人が捕まることを祈る。
テロ行為に屈してはいけない
こんな事件が起こってしまうと、パンを食べるのはとりあえず避けておこうと考えがちだが、それでは犯人の思うツボだ。パンをこよなく愛する我々は、焼き窯の火を絶やさないために、こんな時こそパンを食べ続けるべきだろう。
しかし、万が一針が入っていたら、という恐怖は理屈ではないので、一度考えてしまったらなかなか振り払えるものではない。実際に刺さるのも嫌だ。そんな不安や危険を払拭するためには、針の入ったパンを掴まされない、また掴まされたとしても、口に入れる前に、あるいは指を刺す前に針を発見できる確実な方法を身につけなければならない。
袋から異変を察知すべし
今回の流山市のケースでは、袋に微細な穴が開いていた。これは、針が製造段階ではなく、流通から販売の段階で混入した可能性が高いことを示している――そう話すのは、危機管理に詳しい防犯コンサルタント。
「こうしたケースの混入は、袋を押して空気が抜けるかどうかで異変を察知することができます。パンを買う際は、まず袋を押して確認してみて下さい。中身を潰してしまってはいけません。以前、お店の人に怒られてしまいました」
製造段階で混入したケースは?
しかし、この方法では袋に入れる前、製造段階で混入したケースに対応できない。
「製造段階で混入した針があるかないかを非破壊方式で調べるのは無理です。とりあえず購入しましょう。もし針が見つかれば返品してもらえるわけですから、ためらうことはありません。レシートはちゃんと残しておきましょう。以前、不良品を掴まされたのに、お店の人に返品に応じてもらえませんでした」(前出の防犯コンサルタント)
購入した後は、いよいよ実食だ。はやる気持ちを抑えて、針を警戒しながら食べよう。
「パンを優しく持ち、ゆっくりと一口分の大きさにちぎります。縫い針であれば、これで確実に発見することができます。しかし画鋲のように小さな針の混入がないわけではありません。なので、口に入れた後で、舌で探りを入れながらゆっくりと押しつぶすように食べましょう。こうすると針が刺さる前に察知することができます。クリームなど、中身が柔らかいものについても同様の方法で対処が可能です」(同)
テロに屈しない、という意思表示こそが大事
しかしこの食べ方、どうもスッキリしない。無心に頬張ることは推奨されないのだろうか。
「残念ながら、確実に防ぐというのであれば食べ方には一定の制限が必要でしょう。一番確実なのは、信頼のおけるパン屋で、焼きたてのパンを食べることです。製造から販売までにたくさんの見知らぬ人が関わり、常に監視状態にも置かれていない食品には、どうしても隙ができてしまいますからね。とはいえ、そういう流通品のパンを避けるというのは、テロリストが一番望んでいることですからあまり感心できません。まあ、針の混入は恐ろしいですが、確率からいえば宝くじで3億当たるような話。そこまで気にする必要はありません。このような卑劣な行為があっても警戒しつつ食べ続ければ、こうした行為が無意味だと悟ってやる気をなくすでしょう。これこそが、針の混入を防ぐ最大の手段ともいえます」(同)
あまりオドオドするな、ということか。しかし、犯人が捕まっていない上に、模倣犯も現れかねない今の状況を考えると、今回疑われている販売段階の混入には警戒を続けるべきだろう。袋を軽く押すだけで分かる。念の為に試してみて欲しい。
文/林田卓夫