海外では多くなっているレジでの会計時に店員さんから「よろしければ、お釣り(ポイント)の一部を寄付しませんか?」というコメント。でも世界的な物価高で自分の生活も苦しい中、後ろに並ぶ客の視線を感じながら、「いいえ」と断るのは勇気がいるのは万国共通。
この「レジ横募金(Checkout charity)」は、企業にとっては社会貢献をアピールでき、慈善団体にとっては貴重な資金源となる「Win-Win」な仕組みに見えます。しかし、最新の研究は、この善意のアプローチが、実は顧客に「罪悪感」や「同調圧力」を感じさせ、結果として店への不信感や客離れを招く「逆効果」になり得ることを明らかにしました。
「いい人」と思われたい… プレッシャーが生む「買い物後の後味の悪さ」
オーストラリアの研究チームが行った329人の消費者を対象とした調査によると、多くの客は、レジでの唐突な寄付のお願いに対して「良いことをした」という満足感(ウォームグロー効果)よりも、むしろネガティブな感情を抱いていることが分かりました。
時間的圧力: 後ろに行列ができている中、瞬時の判断を迫られる焦り。
社会的圧力: 店員や他の客の手前、断ると「ケチな人」「冷たい人」と思われるのではないかという恐怖。
こうしたプレッシャーの結果、消費者は「予定外の出費をさせられた」と感じ、そのネガティブな感情の矛先は、慈善団体ではなく、寄付を求めてきた「店(小売店)」に向かうことが判明しました。
「なんで私が?店が払えばいいのに」噴出する不満
調査では、消費者から以下のような辛辣な本音が聞かれました。
「スーパーの方が私よりお金持ちでしょ? なんで客に払わせるの?」
「『断ったら恥ずかしい』という社会的な恥の意識を利用して、寄付を強要されている気分だ」
「集まったお金が本当に全額寄付されているのか怪しい」
その結果、レジでの募金を不快に感じた客は、寄付を拒否するだけでなく、その店への満足度が下がり、二度と行きたくないと感じる傾向が強くなることが明らかになりました。企業にとっては、イメージアップどころか、顧客ロイヤルティを自ら破壊する行為になりかねないのです。
「スマートな善意」への転換が必要
では、どうすればこの「モヤモヤ」を解消できるのでしょうか。研究チームは、いくつかの解決策を提案しています。
事前の告知: レジでいきなり言うのではなく、店内のポスターなどで事前に「募金キャンペーン中」であることを知らせ、客に心の準備をさせる。
セルフレジでの選択: 店員との対面ではなく、セルフレジのタッチパネルで「寄付する・しない」をひっそりと選べるようにし、「同調圧力」を排除する。
透明性の確保: 「集まったお金がどこにどう使われるか」を明確にし、企業の売名行為や税金対策ではないかと疑う客の不信感を払拭する。
善意は、強制されたり、場の空気を読んで仕方なく行うものではありません。企業側には、客の「断る自由」を尊重し、気持ちよく参加できる環境を整える配慮が、今まさに求められていると言えるでしょう。


