三菱化工機、川崎を拠点に循環型社会を目指す新事業「MKKプロジェクト」を発表

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水素製造装置やプラント設計を手掛ける三菱化工機株式会社は、本社を置く川崎市で、循環型社会の実現に向けた新たな連携事業「MKK プロジェクト」を始動しました。本プロジェクトは、同社が長年培ってきた環境対応・創エネルギー技術と、多様な共創パートナーが持つ資産やノウハウを融合させ、社会課題の解決と新しいビジネスモデルの創出を目指すものです。

プロジェクトの背景と課題

現在、政府が推進する「2050年カーボンニュートラル」の達成には、企業単独の技術開発や製品供給だけでは不十分という課題があります。特に水素やバイオマスといったグリーンエネルギー分野では、日本の企業は高い技術力を持つ一方で、技術供給が先行する「プロダクトアウト」の状態にあり、必ずしも需要創出が伴っていません。
また、サプライチェーンも部分的な最適化にとどまっているため、事業全体の収益性が低いという問題も抱えています。
この状況を打開するため、MKKプロジェクトは発足しました。川崎市および神奈川県内の企業や団体と連携し、地域循環型エネルギーシステムの「開発供給」と、それを利用する「需要開発(ビジネスデザイン)」を両輪で推し進め、三菱化工機が中心となって循環型社会の新たなビジネスモデル構築を目指します。

三菱化工機の田中利一社長(左)、林安秀常務執行役員(右)

「Energy創発特区」川崎から世界へ

プロジェクトの拠点となる川崎市は、かつて公害問題を最新の環境技術で乗り越えてきた歴史がある一方、新しいエネルギーを持った土地として注目を集めています。そこで、この地の歴史や文化が持つ「場のエネルギー」、アスリートやアーティストが持つ「人のエネルギー」、そして地元企業が持つ「技術のエネルギー」が融合する川崎を「Energy創発特区」と位置づけ、新たな事業を創出するとのこと。
活動は、外部パートナーと連携し、以下の5つの分野で展開。

  • スポーツ&カルチャー
  • 環境・災害対応
  • 食・医療
  • 学び・人材育成
  • 地域創生
  • 具体的な連携の第一弾

    よくあるお題目かと思いきや、この連携の詳細は実にユニークでエネルギーに満ちたものばかり。

    1. スポーツ&カルチャー分野:DeNAとの連携

    2025年度より、株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)および京浜急行電鉄株式会社が進める「川崎新!アリーナシティ・プロジェクト」に協業パートナーとして参画。2030年10月の開業を目指す世界最先端の環境対応型アリーナの建設で連携します。

    三菱化工機は、自然由来のグリーン水素を活用してCO2を排出しない電力供給を実現するほか、将来的には植物工場で生産した作物の提供や、廃棄物から水素を生成して利用する「完全循環型アリーナ」の実現も構想しています。

    2. 食・医療、学び・人材育成分野:上智大学との連携

    上智大学と産学連携を進め、今秋には「フード&エネルギーのサーキュラーエコノミー化」をテーマとする社会連携講座を開設します(7月3日に覚書を締結済み)。講座ではフードテックや廃棄物削減、バイオマス活用などを扱います。また、開設に先立ち、8月には同テーマのビジネスプランコンテストも開催する予定です。

    経営計画と今後の展望

    三菱化工機は、2025〜27年度の中期経営計画で新たに「グリーントランスフォーメーション(GX)事業」を設け、2027年度には連結売上高900億円のうち230億円をGX事業で見込んでいます。本社・川崎製作所の再編に150億円を投じ、GX事業の研究開発力と人材獲得力を強化する方針です。
    田中利一社長は「新しい分野にも進出し、カーボンニュートラルに向けて進めていく」と強調しており、今後はスタートアップ企業との連携も視野に入れています。「MKKプロジェクト」を通じて外部連携を加速させ、市場開拓と持続可能なビジネスモデルの構築に挑戦していきます。

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