新型コロナウイルスのパンデミックは、私たちの生活のあらゆる面に影響を与えましたが、性犯罪にも大きな変化をもたらしたようです。
バーミンガム大学の研究チームが、イギリスの国家犯罪対策局(NCA)のデータを分析した結果、コロナ禍で性犯罪、特に見知らぬ相手による性犯罪が大幅に減少した ことが明らかになりました。
減少したのは夜間や屋外だけでなく、家庭内での犯罪も
減少したのは、夜間や屋外で行われる性犯罪だけではありません。家庭内 で発生する性犯罪も大幅に減少していたのです。
これは、ロックダウンなどの公衆衛生対策によって、人々の行動パターンが大きく変化したことが影響していると考えられます。
これまでにも、窃盗や強盗など、他の犯罪とコロナ禍の関係を調査した研究はありましたが、見知らぬ相手による性犯罪に焦点を当てた研究は、これが初めてです。
性犯罪減少の要因は?
研究チームは、性犯罪の減少には、以下の2つの要因が考えられるとしています。
1. 犯罪発生率の低下: ロックダウンなどによって、人々の外出が制限され、犯罪者と被害者が接触する機会が減ったため、性犯罪の発生率自体が低下した可能性。
2. 被害届の減少: 被害者が警察に被害届を出すことが難しくなったため、統計上の性犯罪件数が減少した可能性。
バーミンガム大学の Jessica Woodhams 教授は、「コロナ禍の最初の1年間、特に人々の移動が最も制限されていた最初のロックダウン期間中は、犯罪発生当日に行われた被害届が少なくなっていました。これは、被害届を出す機会が制限されたためと考えられます。また、ソーシャルネットワークへのアクセスが制限されたことも、被害届の遅れにつながった可能性があります」と説明しています。
今後のパンデミック対策への活用
Woodhams 教授は、「この情報は、将来のパンデミックや同様の国家緊急事態に備えて、リスクを最小限に抑えるための重要な洞察を与えてくれます。例えば、性犯罪をどのように取り締まるか、性暴力を防ぐための政策をどのように策定するかについて、重要な洞察を得ることができます」と述べています。
犯罪防止への活用
さらに、この研究結果は、性犯罪を防止するための対策を立てる上でも役立ちます。
警察によるイベントや地理的リスクの高い地域の巡回
加害者に対する再教育プログラムの実施
など、性犯罪を未然に防ぐための対策を強化することができます。
重要なのは、正確なデータに基づいた対策
性暴力を防ぐためには、変化するリスク、犯罪のパターン、行動を正確に把握することが不可欠です。
パンデミック時の公衆衛生対策が、人々の日常生活にどのような影響を与え、それが性犯罪の発生場所、時間、方法にどのように影響したかを理解することが重要です。
今回の研究は、Psychology of Violence誌に掲載されました。