アメリカの刑務所でインスタントラーメンが通貨代わり 背景にある米国の深い闇、そして驚きの獄中レシピ

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最近、アメリカではインスタントラーメンが刑務所内で通貨の代わりとして使われているというニュースが話題になっています。一体なぜこのような現象が起きているのでしょうか?そして、刑務所内ではラーメンはどのように食べられているのでしょうか?

なぜインスタントラーメンが刑務所内の通貨に?

インスタントラーメンは、安価で保存がきき、持ち運びにも便利であることから、刑務所内で重宝されています。刑務所の売店でも購入可能で、栄養価が低い食事を補うために囚人たちに人気です。

『プリズン・ラーメン:鉄格子の中でのレシピとストーリー』を記したグスターボ・アルバレス氏は、「刑務所内でマルちゃんやカップヌードルをなくしたら、大混乱になるでしょう」と語っています。それほどまでに、インスタントラーメンは囚人たちにとって欠かせない存在となっているのです。

しかし、インスタントラーメンが通貨として使われるようになった背景には、アメリカの刑務所における深刻な予算問題があります。

背景にある刑務所における予算削減と「懲罰的な倹約」

近年、アメリカの刑務所では予算が大幅に削減され、食事の量や質が低下しています。民族誌学者のマイケル・ギブソン=ライト氏は、刑務所内での独自のお金の使い方を研究し、予算削減が「懲罰的な倹約」の文化を生み出したと指摘しています。

刑務所は、犯罪に対して厳しい姿勢を示し、支出を削減するために、従来は刑務所が負担していた多くの費用を囚人自身に負担させるようになりました。その結果、囚人たちは食料を通貨として使うようになったのです。

刑務所内では、ラーメンは衣類や衛生用品、洗濯やベッドメイキングなどのサービス、さらには賭け事のチップの代わりとしても使われています。

刑務所グルメ:独創的なラーメンレシピの数々

限られた食材と調理器具の中で、囚人たちは工夫を凝らしたラーメンレシピを生み出してきました。アルバレス氏の著書『プリズン・ラーメン』で紹介されている、ユニークな「極道めし」レシピを紹介しましょう。

プリズン・ラーメン・ポップコーン: 袋のまま砕いたラーメンに調味料をかけ、電子レンジで加熱するだけで、手軽なスナックに。
ラーメン・ウィッチ: 袋のまま温めたラーメンで、ボローニャソーセージとチーズを挟んだサンドイッチ。
オレンジ・ポーキー: チリラーメンに白米、豚皮、オレンジ風味のドリンクを混ぜた一品。

以下のものは、著者が刑務所を出ても精力的に開発した“シャバ”ラーメンのレシピ。
スモーク・オイスター・ラーメン: 白玉ねぎ、パクチー、ハラペーニョ、スモーク・オイスター、マヨネーズ、チリシーズニングなどを混ぜた、著者のお気に入りとのこと。

ラーメンが暴動を鎮めた!?

アルバレス氏は、自身の著書『プリズン・ラーメン』の中で、ラーメンが刑務所内の暴動を鎮めたという驚くべきエピソードを紹介しています。

ある日、刑務所内で人種間の対立が激化し、暴動が勃発しました。看守たちは窓から逃げ出し、囚人たちはそれぞれのグループに分かれて争っていました。アルバレス氏も、ヒスパニック系の囚人たちと共に、敵対するグループからの攻撃に備えていました。

その時、一人の黒人の囚人が、暴徒化した囚人たちに向かって「お前たちはここに入って来るな」と叫びました。そして、彼は自分のロッカーからスニッカーズとチップスを取り出し、一人の囚人にそれを分け与えるように言いました。

この光景を見たアルバレス氏は、ひらめきを得ました。彼は仲間たちに、ロッカーからありったけの食料、スープ、ラーメンを集めるように指示しました。そして、彼らは集めた食材で即席のラーメン料理を作り、敵対するグループの囚人たちにも分け与えたのです。

この「ラーメンの施し」は、緊張状態にあった刑務所内に、束の間の平和をもたらしました。アルバレス氏は、「ラーメンは、ただの麺ではなく、対立する者たちを結びつける『平等化装置』だった」と語っています。

ラーメンはただの食べ物ではない

刑務所内でのラーメンは、単なる食べ物以上の意味を持ちます。それは、厳しい環境の中で生き抜くための必需品であり、自己表現やコミュニティ形成の手段でもあります。時には、暴動を鎮めるほどの力を持つこともあるのです。

インスタントラーメンが刑務所内で通貨の代わりとなっているという事実は、アメリカの刑務所が抱える問題を浮き彫りにしています。同時に、逆境の中でも創意工夫を凝らし、楽しみを見出す人間の強さを教えてくれます。