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AI書類選考は年齢で落としていた──40代に年齢の壁

AIの書類選考は年齢を見ている。米iTutorGroupは55歳超の女性を自動で不合格にし、36万5,000ドルで和解した。

応募ボタンを押す。1時間後、不採用のメールが届く。職務経歴書を最後まで読んだ人間がいたとは思えない速さである。40代で転職活動をした人なら、この感触に覚えがあるかもしれない。求人の要件は満たしているのに、最初の関門だけがどうしても抜けない。

日本では、募集や採用で年齢制限を設けることは法律で禁じられている。2007年からだ。それでも「年齢の壁」という言葉は消えない。壁がどこにあるのかが、ここ数年で少しずつ見えてきた。選考しているのが、もう人間ではないからである。

AIは55歳超の女性を自動的に落としていた

米国の教育関連企業iTutorGroupの選考ソフトには、ある設定が組み込まれていた。55歳を超える女性と、60歳を超える男性を、自動的に不合格にする。それだけの処理である。経歴も、資格も、志望動機も関係ない。生年から計算された数字がしきい値を超えた時点で、その応募は終わっていた。

米雇用機会均等委員会(EEOC)は2022年、これを雇用における年齢差別禁止法(ADEA)違反として訴えた。原告となった応募者は200人を超える。iTutorGroupは36万5,000ドルを支払って和解した。

重要なのは、これが「AIに偏りがあった」という話ではないことだ。偏っていたのではない。そう設定されていた。年齢で切るという判断を、人間が機械に代行させていただけである。

100社に応募し、1時間以内に落とされた男


40代のIT技術者、Derek Mobleyが繰り返し経験したのは、届くのが早すぎる不採用通知だった。応募から1時間以内に結果が出る。彼が応募した企業は100社を超えた。

Mobleyは、採用管理システムのベンダーであるWorkdayを訴えた。同社のツールが40歳以上を年齢で差別している、という主張である。2024年7月、連邦判事は訴訟の継続を認めた。さらに2025年5月、この訴訟はADEAに基づく全国規模の集団訴訟として認定される。対象は2020年9月以降にWorkday経由で応募した40歳以上、受付は2026年3月に締め切られた。

つまり、対象になりうる人数が個人の裁判では収まらない規模だと裁判所が判断した。100社に落ち続けた1人の話ではなくなったということだ。

一度落とされると、他社でも落ち続ける


ここで、選考の「壁」の形を変える研究がある。2026年5月26日に公表され、ACM FAccT 2026に掲載された論文「Algorithmic Monocultures in Hiring」だ。スタンフォード大学のRishi Bommasani、Dan Jurafsky、Percy Liang、チャップマン大学のSarah H. Bana、ノースイースタン大学のKathleen A. Creelによる共同研究である。

分析されたのは、実在の応募者340万人が11業種156社に出した400万件の応募だった。分析対象のベンダーは、Fortuneの報道によればPymetrics(2022年にHarverが買収)。論文サイトの表記は「単一の第三者ベンダー」にとどまる。

結果はこうだ。4件応募した応募者のうち、10%が全件落ちていた。応募先が独立に判断しているなら、10件出せば99.9%の確率でどれかは通る計算になる。ところが実際には、同じ確率に届くまでに25件を要した。落とした主体が別々の企業に見えて、判断しているのは同じアルゴリズムだからである。

ただし、断っておかなければならないことがある。この研究が調べたのは人種によるバイアスであって、年齢によるバイアスではない。挙がっている数字も人種のものである。黒人応募者の応募の25.87%、アジア系応募者の応募の14.74%が、その人種に不利に働くポジションへ向かっていた。

年齢の証拠として使える研究ではない。だが、ここで実証されたのは、ある属性を持つ人が同じベンダーを使う企業群で落とされ続けるという構造そのものである。属性が年齢に変わったときに同じことが起きない理由は、少なくとも技術的には見当たらない。

日本では、年齢制限は2007年から禁止されている

日本の話に戻る。労働施策総合推進法(旧・雇用対策法)により、募集・採用時の年齢制限は原則として禁止されている。平成19年、2007年の法改正で義務化された。

例外はある。長期勤続によるキャリア形成を図るための若年者の無期雇用採用、技能やノウハウの継承を目的とした特定年齢層の採用、定年の定めがある場合、新卒採用、法令上の制限がある業種。この範囲を外れて年齢で応募を断ることは、認められていない。

制度としては、40代であることだけを理由に落とされる余地はない。それでも壁の話が続いてきた。求人票から年齢の条件が消えても、書類には卒業年も職歴の長さも書いてある。禁止されたのは「求人票に年齢制限と書くこと」であって、年齢が推定できなくなったわけではない。

それでも経団連は「年齢を学習させるな」と書いた


2026年4月14日、経団連は「HR部門におけるAI等の活用に関する報告書」を公表した。そこに、こう書かれている。

「採用・評価AIにおいて、性別・年齢等の属性情報を入力・学習させない」

あわせて「AIの結果のみで不利益な処遇を決定しない」ことも挙げ、出力結果を属性別に定期的に確認して不合理な差がないか検証すること、過去の人事データを学習に使う場合は偏りが含まれていないか事前に検証することを求めている。

日本の経済界を代表する団体が、名指しで年齢に触れた。裏を返せば、放っておけば入りうるという認識があるということだ。同じ報告書の調査(2025年、n=75社)では、採用でAIを活用していると答えた25社のうち、15社が応募者スクリーニングに使っていた。

日本の選考現場そのものも動いている。レバレジーズが2026年3月18日に発表した実態調査(2026年2月13〜16日、新卒・中途採用で課題を感じている企業の担当者1,625人)の数字が、その速度を示す。

調査項目 割合
生成AIの影響で書類選考における人物の見極めが難しくなった 69.7%
通過基準を緩和して面接人数を増やす 53.2%
AI面接の評価をAIスコアのみで自動判定している 38.1%
書類選考を廃止して全員をAI面接にする 33.5%
AI面接導入の満足度 86.7%

満足度86.7%。使っている側の評価は高い。その一方で、AIスコアのみで自動判定している企業が38.1%ある。人間が一度も評価に関わらない選考が、それだけの企業で動いているということだ。この構図については以前、AI面接で落ちる本当の理由で詳しく書いた。

40代が書類選考でいまやるべきこと

ここまでの材料から、実務的な話を引き出せる。

一つ目は、企業が二手に分かれているという事実の利用だ。AIスコアのみで自動判定する企業が38.1%ある一方で、通過基準を緩和して面接人数を増やす企業が53.2%、書類選考を廃止して全員をAI面接にする企業が33.5%ある。書類で機械的に絞る側と、書類を軽くして人と会う側。年齢が推定できる情報を持つ応募者にとって、後者のほうが分がいいのは明らかである。求人を選ぶ段階で、選考フローがどちらかを見る価値がある。

二つ目は、応募先を散らすことだ。同じベンダーの判定が効いている企業群にまとめて出すと、同じ理由でまとめて落ちる。先の研究が示したのは、独立した判断がないとき必要な応募数が10件から25件に膨らむという構造だった。人種の研究ではあるが、応募先を数だけで増やしても意味が薄いという教訓は、そのまま使える。数を増やすより、判定の系統が違う先へ散らすほうが効く。

三つ目は、書類の中身より前の話になる。AIが選考に関わっているかどうかを、応募者が知る手段は日本にはまだない。ニューヨーク市は2023年7月に地方法144を施行し、カリフォルニア州では2025年10月1日、自動意思決定システムによる雇用差別を規制対象に含める規定が発効した。日本にこれに当たるものはない。経団連の指針は、あくまで企業が自主的に守るものである。

書類の書き方を工夫する話は、エントリーシートにAIへの隠し命令を仕込む人たちで書いたように、そこそこ危うい方向へ進んでいる。小手先で機械を欺くより、人が読む選考を選んだほうが、いまのところ確実だ。

40代の壁は、気のせいではなかった。ただし壁は面接室の手前ではなく、その一つ手前に立っている。

よくある質問

日本で年齢を理由に応募を断るのは違法なのか

原則として認められていない。労働施策総合推進法(旧・雇用対策法)により、募集・採用時の年齢制限は原則禁止で、平成19年、2007年の法改正で義務化された。ただし例外事由がある。長期勤続によるキャリア形成を図るための若年者の無期雇用採用、技能・ノウハウ継承のための特定年齢層の採用、定年の定めがある場合、新卒採用、法令上の制限がある業種などがこれにあたる。この範囲を外れて年齢だけを理由に断ることは認められていない。

AIによる書類選考はどれくらい広がっているのか

経団連が2025年に実施した調査(n=75社)では、採用でAIを活用していると答えた25社のうち、15社が応募者スクリーニング(エントリーシート・動画解析等)に使っていた。レバレジーズが2026年3月に発表した調査(n=1,625)では、書類選考を廃止して全員をAI面接にすると答えた企業が33.5%、AI面接の評価をAIスコアのみで自動判定している企業が38.1%にのぼる。人間が一度も書類を読まない選考は、例外ではなくなりつつある。

一度AIに落とされると、他社の選考でも落ちるのか

同じベンダーのシステムを使う企業群では、そうなりうる構造が実証されている。応募者340万人・400万件の応募を分析した論文「Algorithmic Monocultures in Hiring」(ACM FAccT 2026)によると、4件応募した応募者のうち10%が全件落ちていた。独立した判断なら10件で99.9%どれかは通る計算のところ、実際には25件を要した。ただしこの研究が調べたのは人種によるバイアスであって、年齢によるバイアスではない。年齢で同じことが起きていると確認されたわけではなく、構造として起こりうるという話である。

企業は採用AIに年齢を学習させてよいのか

経団連は明確に否定している。2026年4月14日に公表した「HR部門におけるAI等の活用に関する報告書」で「採用・評価AIにおいて、性別・年齢等の属性情報を入力・学習させない」と明記した。あわせて「AIの結果のみで不利益な処遇を決定しない」ことを求め、出力結果を属性別に定期的に確認すること、過去の人事データを学習に使う場合は偏りの事前検証を行うことも挙げている。ただしこれは法規制ではなく、企業が自主的に守る指針である。

AIを使った採用に規制はあるのか

海外では進んでいる。米国では雇用機会均等委員会(EEOC)がiTutorGroupを訴え、36万5,000ドルの和解に至った。ニューヨーク市は2023年7月、企業の採用活動等におけるAI活用を規制する条例(地方法144)を施行している。カリフォルニア州では2025年10月1日、雇用差別の対象にAI等の自動意思決定システム(ADS)の利用によるものを含むとする規定が発効した。日本には現時点でこれらに相当する規制はなく、経団連の指針など自主的な取り組みにとどまる。

編集部: