部活帰りのポテト、買い物帰りの今川焼き ポッポの味が冷凍食品で”帰ってきた”

「ポッポ」と聞いて、イトーヨーカドーのフードコートが浮かぶ人は少なくないだろう。部活帰りに友達と山盛りポテトをつついた放課後。母親の買い物を待つあいだにかじった今川焼き。特別なごちそうではないのに、妙に忘れられない。あの味が4月6日、冷凍食品になって家庭の食卓に届きはじめた。イトーヨーカ堂がフードコートブランド「ポッポ」と共同開発した11品目を、全国196店舗で順次販売している。

50年愛された「何でも屋」の現在地

ポッポは1975年に生まれた。ラーメン、たこ焼き、今川焼き、フライドポテト、ソフトクリーム。屋台や縁日を思わせる幅広いメニューを、手頃な値段でそろえてきた。専門店がひしめくフードコートの中で、この「何でも屋」ぶりはむしろ異彩を放つ。最盛期には148店舗まで広がったが、イトーヨーカドーの閉店が続くなかで現在は首都圏を中心に24店舗。それでも年間の来店者数は約220万人にのぼる。

閉店が決まった店舗には「ポッポ、やめないで」というメッセージが貼り出されたこともあるほどだ。

ポッポ部の白澤光晴総括マネジャーはこう話す。「ポッポは商品として尖っていないかもしれない。ただ本当に普通で、安定した味で、ついまた食べたくなる。そういうものをずっと大事にしてきた」。平日の客層はシニアが中心だが、週末はファミリーであふれる。子どもの頃にポッポで食べていた世代が親になり、今度は自分の子どもを連れてくる。そんな循環が自然にできているという。

冷凍庫から届く「ポッポらしさ」

ラインアップは今川焼き、たい焼き、たこ焼き、からあげ2種(むね・もも)、アメリカンドッグ、牛肉コロッケ、ハッシュドポテト、ソーセージピザ、マヨコーンピザ、ポテト800gの計11品。価格は399円から699円(税抜)と、ポッポらしく手頃に抑えた。

開発で意識したのは「慣れ親しんだ味」「簡単調理」「ボリューム感」の3つ。ただし、フードコートのメニューをそのまま凍らせたわけではない。ポテトだけはフードコートとまったく同じ原料だが、ほかの商品には別の素材を使っている。揚げたてを出すフードコートと、電子レンジやオーブンで仕上げる冷凍食品では、同じ原料でも同じ味にはならない。家庭で調理したときに「これはポッポだ」と思えるかどうか。その基準で素材を一から選び直した。

この挑戦には伏線がある。2025年度に先行発売した「ポッポのポテト」500gが、冷凍ポテトカテゴリの売上で1位を獲得した。フードコートで年間80万食以上を売る看板商品のブランド力が、冷凍食品の売場でもそのまま通じることが裏づけられたかたちだ。

注目したいのは、11品のなかにフードコートにないメニューが混ざっていることだ。ハッシュドポテトと牛肉コロッケは完全な新作。ピザは創業当時に扱っていたものの、その後メニューから消えており、約50年ぶりの”復活”にあたる。白澤氏は「ハッシュドポテトは個人的にも楽しみにしている商品。お客様の反応がよければ、逆にフードコートで商品化してもいい」と明かす。冷凍食品発の新メニューがフードコートに逆輸入される日が来るかもしれない。

フードコートと冷凍庫をつなぐ

新商品の背景には、冷凍食品事業の課題がある。イトーヨーカ堂の冷凍食品売上は2015年比で約1.8倍と好調だが、「冷凍軽食」に絞ると市場が微増するなか自社は横ばいにとどまっていた。ここにポッポのブランドで切り込む。2026年度は冷凍食品全体の売上を既存店ベースで1割伸ばす計画で、ポッポ単体で冷食売上の5%を占める構成を目指している。

売場の考え方も変わる。冷凍食品コーナーを加工食品の棚から総菜売場のそばへ移し、改装店舗では面積を約1.5倍に広げる方針だ。デイリー食品部の小笠原優総括マネージャーは「総菜と同じように、その日のおかずとして冷凍食品を手に取ってほしい。冷凍食品は夕方以降に売上が伸びる。総菜売場との隣接は理にかなっている」と語る。

さらにポッポは、フードコート店舗の再拡大も視野に入れている。店舗で食べてファンになった人が冷凍食品を手に取り、冷凍食品で知った人がフードコートに足を運ぶ。その循環を描く構想だ。

店の数は減った。けれどポッポが50年かけて積み上げてきた「普通でいい、普通がいい」という味の記憶は、フードコートの外にも届きはじめている。あの頃の放課後を覚えている人も、ポッポをまだ知らない人も、まずは冷凍庫に一袋、忍ばせてみてほしい。

編集部: