食事補助の非課税枠が42年ぶり倍増へ エデンレッドジャパンが描く「普及率50%」への道筋

企業が従業員の食事代を補助する際に所得税がかからない非課税限度額が、2026年4月1日から月額3,500円から7,500円へと倍増される。1984年以来、実に42年ぶりの改正だ。この歴史的転換を前に、食事補助サービス「チケットレストラン」を展開するエデンレッドジャパンは3月30日、福利厚生大手2社および外食企業7社との大型連携を発表した。

「日本の食事補助を世界水準へ。社会のインフラへ」。都内で開かれた発表会で、エデンレッドジャパンの天野総太郎社長はこのキーメッセージを掲げた。背景にあるのは日本と諸外国との圧倒的な格差である。欧州を中心に食事補助の導入率が50〜70%に達する国々と比べ、日本の導入率はわずか14%。

非課税枠の上限も改正前は月額3,500円と、諸外国の月額2万5千円〜3万円に対して7倍から10倍の開きがあった。天野社長は「4月から2,500品目以上の食料品値上げが予定され、エネルギーコストも上昇している。このタイミングでの倍増は、働く世代の暮らしを支える最大の防波堤になる」と語った。

改正のインパクトは数字で見ると分かりやすい。年間最大9万円が非課税対象となるため、年収700万円の従業員が同額を現金で受け取った場合の手取り約5万7千円に対し、食事補助なら約7万7千円が手元に残る。その差は約2万円。企業側にとっても、同じ手取り増を現金支給だけで実現しようとすれば約14万円の予算が必要になる計算で、非課税枠の活用は双方にとってメリットが大きい。

福利厚生大手2社との連携で「届かなかった層」へ

今回の連携の柱の一つが、福利厚生業界大手であるベネフィット・ワンとイーウェルとの提携強化だ。両社が提供するカフェテリアプランのメニューにチケットレストランを組み込み、従業員がカフェテリアポイントを使ってカードにチャージできる仕組みを整えた。

ベネフィット・ワンの古賀清常務執行役員は、自社の顧客企業の現状をこう明かした。「カフェテリア制度の中で食事補助メニューを採用している企業はおよそ25%にとどまっている。その多くは社員食堂を前提とした設計がベースで、社食を持たない企業にとっては制度化が難しかった」。

チケットレストランなら利用先や金額、時間をコントロールできるため、社食のない企業でも導入しやすいと評価する。ベネフィット・ワンの顧客基盤は約1万8千団体にのぼり、この連携を通じて食事補助の恩恵を届けられる企業の裾野は一気に広がる。

連携を記念し、両社のプラットフォーム経由で申し込む企業にはカード発行などの初期費用を無料とする期間限定の優待プランを用意。さらに、申込先を問わず2026年内の手数料を最大50%オフにするキャンペーンも実施する。

外食7社12ブランドの「食のクーポン」始動

松屋フーズ 今野慎一郎ITソリューション部長

もう一つの柱が、加盟店との連携強化だ。4月1日から、チケットレストランの公式アプリ内で松屋、吉野家(※注「吉野家」の「吉」は、正しくは「土(つち)」の下に「口」の字です)、セブン-イレブン、ガスト、日高屋、和食さと、ロイヤルホストなど7社12ブランドの割引クーポンが利用できる「食のクーポン」サービスが始まる。毎日・いつでも・何度でも使えるクーポンとして、利用者の食事体験を底上げする狙いがある。

発表会に登壇した野家ホールディングスの寺澤裕士マーケティング企画部長は、自社の原点に触れながらこう述べた。「当社は1899年、日本橋の魚河岸で創業した。当時、多忙を極める現場で働く人たちが短時間でエネルギーをチャージできる存在として支持された。その精神は今も変わらない」。日常食を扱う企業として食のインフラの役割を果たしたいという思いが、エデンレッドジャパンの構想と重なったと語った。

松屋フーズの今野慎一郎ITソリューション部長も「食事を通じて働く人を応援したいというビジョンに共感する」と応じた。

あわせて4月1日からは、AIによるレシート自動解析機能「証憑スキャン」もオプション提供を開始する。従業員がアプリでレシートを撮影するだけでAIが購入内容を数秒で解析し、食事補助の対象外品目が含まれていないかを自動判定する。非課税運用の透明性を高めることで、企業が安心して導入できる環境を整える。

「普及率14%→50%」、次は物価スライド制へ

エデンレッドジャパン 天野総太郎社長

天野社長は発表会の締めくくりで「今回の非課税枠見直しや連携強化をゴールとは考えていない。やっとスタート地点に立てたと思っている」と述べ、今後の3つのアクションを示した。

第一に食事補助の認知拡大と普及率の50%到達、第二に非課税運用に関するガイドライン策定やオンライントレーニングの提供、そして第三に物価スライド制の構築だ。42年間据え置かれた上限額が物価変動に応じて柔軟に改定される仕組みを、行政との対話や業界団体の設立を通じて実現していく方針を掲げた。

エデンレッドの創業者が1962年にフランスで食事券を「発明」してから60年余り。決済型の食事補助は欧州では国家レベルの経済政策として機能し、OECDも現金支給にはない経済波及効果があると評価している。日本でこの仕組みが社会インフラとして根づくかどうか。42年ぶりの制度改正を起点に、その試金石となる取り組みが動き出した。

編集部: