「みんな持ってるから、僕もスマホが欲しい!」 子供にそうねだられて、小学校高学年や中学入学(12歳前後)を機に「スマホデビュー」を許可する家庭は多いはずです。
しかし、その決断が子供の健康に深刻なリスクをもたらすかもしれないとしたら?
小児科分野の権威ある学術誌『Pediatrics』に発表された最新の大規模研究が、「12歳でのスマホ所有」が、子供の肥満、うつ、そして睡眠不足のリスクを著しく高めるという衝撃的なデータを突きつけました。
12歳で所有すると、リスクは最大1.6倍に
フィラデルフィア小児病院やカリフォルニア大学バークレー校などの研究チームは、9歳から16歳の子供たち約10,500人の脳の発達データを分析しました。
スマホを持っている12歳の子供と、持っていない12歳の子供を比較したところ、所有している子供には以下のような高いリスクが確認されました。
睡眠不足のリスク:1.6倍
肥満のリスク:1.4倍
うつのリスク:1.3倍
さらに恐ろしいのは、「持たせるのが早ければ早いほど危険」という事実です。スマホを手にする年齢が1年早まるごとに、これらのリスクは約10%ずつ増加することが分かりました。
研究者も「わが子には持たせない」と決断
この研究を主導したラン・バージライ医師自身も、9歳の子供を持つ父親です。
彼は、「私の9歳の子もスマホを欲しがっています。これは思春期を迎えるすべての親にとっての悩みでしょう」と語ります。しかし、今回の研究結果を目の当たりにした彼は、自身の子供へのスマホ購入についてこう結論づけました。
「当分の間、買い与えるつもりはありません。明確な決断です」
すでに持たせている親はどうすればいい?
この研究は、「12歳でスマホを与えた親」を責めるものではありません。バージライ医師自身、上の2人の子供には12歳になる前に買い与えていたといいます。
スマホには、友人との繋がりや情報アクセスといったメリットも確かにあります。重要なのは、リスクを最小限に抑えるための「家庭内ルール」です。
専門家は以下のような対策を推奨しています。
夜、寝室にスマホを持ち込ませない(睡眠の質の確保)
スマホを使わないアクティビティや時間を確保する
親、子、小児科医で「準備ができているか」をよく話し合う
今回の研究は、単なる相関関係を示したものであり、直接的な因果関係を証明したわけではありません。しかし、成長期の子供の脳や身体にとって、スマホが想像以上の負荷となり得ることは明らかです。
「周りが持っているから」と安易に買い与える前に、そのデバイスが子供の健康に及ぼす影響について、一度立ち止まって考えてみる必要がありそうです。