かつての青春コメディやドラマでは、過激な恋愛描写や性的なジョークが、定番の「刺激」として多用されてきました。しかし、今のZ世代(10代~20代前半)は、そうしたコンテンツに「うんざり」しているようです。
UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の研究センターが発表した最新の調査レポート「ティーンとスクリーン」によって、10歳から24歳の若者たちが、メディアにおける過剰な性描写を敬遠し、代わりに「友情」や「恋愛に興味がないキャラクター」の描写を強く求めていることが明らかになりました。
「セックスシーンが多すぎる」約半数が回答
この調査は、米国在住の10歳から24歳の若者1,500人を対象に行われました。彼らがメディアに何を求めているか、その実態が数字となって表れています。
48.4%(ほぼ半数)が、現代の映画やドラマには「セックスや性的なコンテンツが多すぎる」と回答。
59.7%(約6割)が、「中心的な関係性が『友情』であるコンテンツをもっと見たい」と回答。
54.1%が、「その時点では恋愛関係に興味がないキャラクターの描写」を見たいと回答。
さらに、「画面で探求してほしいトピック」のリストにおいて、「恋愛」は下から3番目という低い順位でした。Z世代の視聴者にとって、「有害な関係(Toxic relationships)」や「三角関係」は、最も退屈な「お決まりのパターン」の一つとして認識されているようです。
“恋愛至上主義”の終わり?「ノマンス(Nomance)」という傾向
この傾向は、決して今年に始まったものではありません。UCLAの2023年の調査でも、Z世代が性的な描写よりもプラトニックな関係性(友情など)を中心とした物語を好む傾向が示されており、研究者たちはこのトレンドを「ノマンス(Nomance)」(No + Romance)と名付けました。
この「ノマンス」の傾向は、彼らの実生活における行動の変化とも一致しています。
米疾病対策センター(CDC)の2021年の調査によると、性交渉の経験があると回答したティーンエイジャーはわずか30%。これは2019年の38%、さらにそれ以前の数十年間が50%以上だったことと比較して、劇的に減少しています。
この「セックス離れ」について、CDCの専門家は、「若者が性交渉を遅らせ、パートナーの数を減らすという健全な選択をしているのであれば良いことだ」としながらも、「これが社会的な孤立を反映している可能性も懸念している」と、複雑な見方を示しています。
Z世代がメディアに求める「リアリティ」
今回のUCLAの調査では、Z世代が実写よりもアニメーションを好む傾向(2024年の42%から48.5%に上昇)も明らかになりました。
しかし、Z世代が「映画やドラマ離れ」をしているわけではない、という点も重要です。ステレオタイプに反して、彼らは今でも映画館に行き、作品を鑑賞し、それについて友人と議論することを熱望しています。
彼らが求めているのは、過剰な性的刺激ではなく、「リアリティ(現実感)」と「共感性」です。2023年の調査でも、10~25歳の62%以上が「物語を進める上で、性的なコンテンツは必要ない」と回答していました。
ハリウッドの映画における性的なコンテンツは2000年初頭と比較して40%減少したという報告もあり、メディア業界もまた、「恋愛至上主義」ではない、新しい物語を求めるZ世代の価値観に、静かに適応し始めているのかもしれません。