性行為はスポーツに悪影響が無いと判明 持久力、パワーいずれのパフォーマンスにも問題なし

現役の女性競輪選手が、指導担当や先輩選手から「彼氏と性交渉ばかりして集中しているから弱くなっている」とセクハラ発言をを受けたとして。損害賠償を求めて提訴。2023年9月に賠償が認められ、判決は確定しています。このように、昔から「試合の前に性行為をするとスポーツのパフォーマンスが落ちる」と言われることがあります。この考えは、多くのアスリートやコーチの間でも広く信じられてきましたが、実際には科学的な根拠があるのでしょうか?

最新の研究によると、この「性行為はスポーツに悪影響を与える」という神話は、どうやら事実ではないようです。2022年に発表された科学論文「The influence of sexual activity on athletic performance: a systematic review and meta-analyses」では、性行為が運動能力に与える影響を調べた複数の研究をまとめた結果、性行為がスポーツのパフォーマンスに悪影響を与えるという証拠は見つかりませんでした。

性行為と運動パフォーマンスに関する研究

この研究では、性行為とスポーツパフォーマンスの関係を探るために、過去の9つの研究を分析しました。これらの研究には、合計で133人の健康な成人(ほとんどが男性)が参加しており、性行為が運動能力に与える影響を調査しています。具体的には、有酸素運動(ランニングやサイクリングのような運動)、筋持久力(例えば腕立て伏せの回数)、そして筋力やパワー(例えばベンチプレスやジャンプの高さ)を測定しました。

性行為は、性交または自慰行為として定義され、その後30分から24時間以内に行われた運動テストの結果が分析されました。そして、その結果を性行為をしなかった場合と比較しました。

性行為が与える影響は?

多くの人が予想するように、「性行為をすると体力が落ちてしまうのではないか」という考え方が根強いですが、結果は驚くべきものでした。研究によると、性行為をしてから運動をしても、性行為をしなかった場合と比較して、パフォーマンスにほとんど違いはありませんでした。つまり、性行為が運動能力にマイナスの影響を与えるという科学的な証拠はないのです。

例えば、性行為を行った後にランニングやサイクリングをしても、運動時の持久力やパワーに大きな差は見られませんでした。同様に、性行為を行った後でも腕立て伏せの回数やジャンプの高さにも影響はなく、どちらかが優れているということはなかったのです。

性行為がパフォーマンスに与える影響は中立的

この研究の結果から言えることは、性行為が運動パフォーマンスに与える影響は、プラスでもマイナスでもない、つまり「中立的」であるということです。性行為をしてもしなくても、運動のパフォーマンスには大きな違いはないというのが、科学的な結論なのです。

なぜこの神話が広まったのか?

それでは、なぜ「性行為がスポーツに悪影響を与える」という神話が広まったのでしょうか?一つの理由として考えられるのは、性行為が体力を消耗させるという一般的なイメージです。特に、性行為によって心身が疲れると感じる人もいるため、これが運動パフォーマンスに悪影響を与えるという信念に繋がったのかもしれません。

また、長年にわたってこの考え方が信じられてきたため、特にスポーツ界では、科学的な根拠がなくても「やらない方がいい」というアドバイスが広まっていたのです。

今後の研究への期待

この研究では、性行為が運動能力に影響を与えないことが明らかになりましたが、いくつかの制約もあります。例えば、この研究に参加したのはほとんどが男性で、女性に対する影響については十分に調査されていません。また、実際のスポーツ競技ではなく、運動テストを使った結果であるため、今後はより多くの競技を通じた調査が必要です。

それでも、今回の研究は、これまで信じられてきた「性行為はスポーツに悪影響を与える」という考え方に疑問を投げかけ、アスリートやコーチにとっても安心できる結果と言えるでしょう。

性行為がスポーツに悪影響を与えるという神話は、科学的な根拠がないことが今回の研究で明らかになりました。性行為が運動パフォーマンスに与える影響は中立的であり、運動能力や体力に大きな変化をもたらすことはないということです。したがって、試合や競技の前に性行為を避けるべきかどうかについては、個々の判断や体調に委ねるのが良いでしょう。

編集部: