亡くなった伝説のスクープ誌編集長が、晩年追求した人気作家の表現問題

0
169

90年代から00年代初頭に人気芸能人のスクープを連発し、サブカル雑誌から一躍トップスクープ誌に躍り出た雑誌『BUBKA』。その創刊編集長である寺島知裕氏が、5月中旬に自宅で亡くなっていたことが判明した。

“文春砲”なみの破壊力のあるスキャンダルを連発したことから、大手芸能事務所から付け狙われるほどだったという寺島氏。実際、氏が手がけたスクープの中には元人気女優のAさんの盗撮を映像があり、当時大手企業のCMに出演するなど人気だったAさんは大きな痛手をうけて芸能界から姿を消している。それだけに氏の訃報には、様々な憶測が流れているほどだ。

そんな寺島氏は晩年には出版社を離れ、芸能界を裏側から積極的に取材するなどジャーナリストとして活動していたが、取材内容は発表されておらず、とんでもないスクープを隠し持っているのではないかと推測する声もある。芸能界だけではなく、政界、文芸など幅広いジャンルのスキャンダルが書かれた“デスノート”があるという。

伝説の編集長が人気作家・樋口毅宏氏を追求していた理由

寺島氏が晩年までジャーナリストとして注目していたのが、作家の樋口毅宏氏だという。元々寺島氏と同じ出版社で、『BUBKA』でも部下だった樋口氏の作品に、寺島氏をモデルとしたのではないかと疑われる登場人物がおり、その描き方に激怒したという。

「危険を顧みず社会悪と戦ってきたという自負が寺島氏にはありました。寺島氏の元で、樋口氏は女優Aの温泉盗撮写真ページを担当するなど、共に死線をくぐったという想いがあったそうです。それだけに寺島氏をモデルとしたのではないかという人物の、酷い描き方には大変にショックを受けていたとか」(交友関係のあったフリーライター)

寺島氏は樋口氏の作品の“疑惑”について積極的に調査を行っていたようだ。

「樋口氏のある作品には、会社の元同僚たちと同じ名前の人物が複数登場しており、もし本人たちであれば実に不快感な描き方をしている。その同僚たちに対して、寺島さんは、樋口氏が自分たちをモデルにした証拠となるものを持っていると言っていました。主張の真偽はともかく、ブツ自体は、さすが寺島氏というもの。この証拠を共有していたといいます」(芸能誌編集長)

寺島氏は樋口氏の作品に“不快感を覚える描き方で、本人の承諾なく描かれた”と思しき仲間たちに積極的に接触しており、この問題をジャーナリストとして世に問おうとしていたという。想像してもらいたい、もし自分の知り合いが、小説に自分の名前を使った登場人物を出し、酷い描き方をしていたとしたら、多くの人は不快感を覚えだろう。そしてこれは表現の自由の問題だけではなく、名誉毀損など多くの法的観点から問われる可能性がある。

伝説の編集長が問うた表現の自由

寺島氏はもし自分たちがモデルで、承諾もなく、本人たちにとって不快な描き方をしているとすれば、名誉毀損、プライバシーの侵害、肖像権の侵害等である可能性があるのではないかと、名誉毀損に詳しい弁護士に相談をしていたという。

作家・柳美里の「石に泳ぐ魚」事件では、作品のモデルとなった女性の容姿、国籍、出身大学、専攻、家族の経歴や職業までもがそのまま描写されていたため、名誉毀損、プライバシー侵害、名誉感情の侵害で裁判になり、柳側が敗訴。出版社など制作サイドは、出版差し止めなど多大な金銭的ダメージをおっている

「石に泳ぐ魚」事件では、文学的表現においても、他者に害悪をもたらすような表現は慎むべきであると最高裁が指摘。寺島氏はこの裁判に注目しており、判例なども読み込んでいたという。寺島氏は誰でも表現ができるようになった時代だからこそ、「表現の自由」という問題について一石を投じたかったのかもしれない。そして、寺島氏が亡くなっても、意思を継ぐ者が何人もいるという。

「それだけ、寺島氏のジャーナリスト精神が引き継がれているということでしょう。他の元同僚たちも樋口毅宏氏の作品に対して、アクションを起こすタイミングを見計らっているといいますよ」(フリー編集者)

中にはこんな人物も

しかも、寺島氏が相談していた相手には、会社の元後輩であり、現在は大手芸能事務所や宗教団体にコンサルとして潜り込んでおり、トラブルでの采配をとっている、“裁判とトラブルが三度の飯より好き”という人物がいます。この人も当該作品の表現に対して思うところがあり、映像化されるなどあれば、制作サイドに“面倒なアクション”を起こすつもりだと、寺島さんの墓前に誓っています。この人物は高額訴訟などを仕掛けるのが得意で、制作サイドに名を連ねている個人を訴えるような、金に目をつけないイヤな戦法をしますから、面倒くさすぎますね…」(前出・フリーライター)

また寺島氏はこんな危惧を知人に話していたという

「私が亡くなった場合、身寄りがないから、あとは情報操作がいくらでもできてしまう。自分に恨みのある芸能大手プロから金をもらった、卑しい作家やライターに、自分の功績を汚されるような、酷い出版物や記事を作られる危険性がある。もし出版物が出たら、注意してもらいたい」(寺島氏が生前に知人に送っていたメール)

今は、最後までジャーナリストとして人生を全うした寺島氏の冥福を祈りたい。