カンロ飴をはじめ、ピュレグミやマロッシュなど多くの人気商品で知られるカンロ株式会社。そんな同社が5月16日から発売した飴の新商品「透明なハートで生きたい」がSNS上で大きな話題となっている。現役高校生のモデル、タレントら3人を「キャンディディレクター」に任命して開発したもので、これまでのキャンディ商品にはない、情緒的なデザインの青いパッケージが特徴となっている。
パッケージは全6種類となっており、その日の気分に応じて選ぶことができる。表面の円窓から中身の飴粒が見え、裏面にはそれぞれ表面デザインと連動したストーリーがプリントされており、青春をイメージした“エモい”雰囲気を実現している。
キャンディ本体も、若年層がSNSや写真撮影などに使うことが多い「ハート」型で、カラーも「透明」な要素が取り入れられている。製造工程で気泡が入ってしまうことから、通常では透明に近づけることが難しいが、およそ120回におよぶ試作を重ねて透明さを実現。商品名もセリフのようなフレーズを採用することで10代の儚さと強さを表現、SNSでシェアしたくなるようなものとなっている。
飴のプロであるカンロのノウハウと、高校生ならではの新鮮なアイデアを掛け合わせ、商品名、パッケージ、飴本体、いずれもこれまでにはないエッジのあるものに仕上がった。
マロッシュやピュレグミなどグミでは最先端の商品開発を行ってきたカンロが、なぜこれほど踏み込んだキャンディを発売したのか。それは同社の“飴の未来”への危惧があった。
同社の2022年12月期決算によれば、キャンディ市場全体における同社のシェアは12.2%で業界トップ。だがグミが市場を拡大・成長する一方、キャンディ市場そのものは停滞。若い世代にグミが刺さる一方、飴の魅力が届いていないという問題が浮上してきた。
飴の年代別購入規模は、年齢が若くなるほど低下して、10代では特に少ない。「駄菓子屋の減少」「家の置き菓子として選ばれていない」「遠足での飴、ガム禁止。お菓子交換禁止」といった様々な背景により、若い世代が飴に触れる機会が減っているという。
実際、プロジェクトに参加したキャンディディレクターの3人も「飴は人からもらうことはあっても自分では買わない」「おばあちゃんたちが持ち歩いているもの」「(小さいバッグを持つことが多いので)かさばって持ち歩きづらい」というイメージを持っていたというほど。
このままではキャンディ市場そのものが廃れてしまうかもしれない、そんな危機感からカンロは「Z世代 飴の原体験共創プロジェクト」をスタートした。座談会などから、現状の飴の課題や若者の考えなどを調査。そこから発展し、現役高校生で構成されるキャンディディレクターを登用、Z世代に飴の価値を再認識してもらいたいと「透明なハートで生きたい」が開発された。
同社ではこの商品に、「飴は“もらうモノ”から、“あげたいモノ”に。そして“うれしいモノ”の象徴に」したいという想いを込めているという。
カンロの「Z世代 飴の原体験共創プロジェクト」プロジェクトリーダー河野亜紀氏は、「若さゆえに無敵だと思っていた彼らは、一方で心の寂しさも持ち合わせており、私たちが想像もしなかった価値観を持っていた」と、商品開発を振り返る。
そんな現在の若い世代の感性から生まれた「透明なハートで生きたい」が、今後市場でどう伸びていくのか注目だ。