カンロ株式会社といえば、「金のミルク」や「ピュレグミ」で知られるキャンディメーカー大手。そんな同社が発表した、フューチャーデザイン事業が注目を集めている。
これは今年策定したKanro Vision 2030「Sweeten the Future」における拡大事業領域内の一つ。「フューチャーデザイン事業」は「サステナブル」と「well-being」の2つをキーワードに事業化の基盤構築を行い、カンロの未来を担う事業として推進するというもの。
キャンディという枠を超えて新たな市場と製品の創造を目指す、その具体的な事例が発表され、カンロらしいユニーク内容となっている。
飴の残渣から香り高いマスクスプレーやアロマスプレーが誕生
キャンディの製造過程で発生する残渣は、2020年度では年間約1302トンが発生。飴を型枠で型取る際に発生するかけらや、欠けや気泡が入った規格外品などがこれにあたる。その残渣のうち90.7%が他社に引き取られ、現在は主に飼料・肥料として再利用されているものの、今後はこれを自社で再利用することも目指す。
カンロではこれまでも飴の賞味期限延長など食品ロスへの取り組みを行っていたが、さらなる食品ロスへのサステナブルな取り組みとして、今回披露されたのがマスクスプレーとアロマスプレーだ。
独自の発酵技術を持つバイオ・エンジニアリング企業 株式会社ファーメンステーションを協業パートナーに据え、飴の残渣に米を加えて、さらに酵母を入れて発酵させることによりエタノールを生成。規格外で販売不可能な飴を活用して作るエタノールを使用して生まれたのが、マスクスプレーとアロマスプレーだ。
実際に使ってみると、飴由来といってもマスクスプレーはラベンダー&ティーツリーのフレッシュな香り。マスク内にふきかけるだけでさわやかな空気を感じることができた。またアロマスプレーはヒバ&カルダモンの香りで、部屋にまくとリラックスして落ち着いた気分にさせてくれる。
2022年夏以降は規格外の飴から生まれたハンドスプレー・石鹸・ウェットティッシュ等、手や指先をクリーンにする「HAND」のための雑貨をヒトツブカンロ エコラインにて順次販売していくという。
飴で出来たキャンディストロー
カンロらしさを発揮しているのが、飴から作られたキャンディストロー。
これは株式会社リベラベル代表取締役社長で、ストローマエストロの野村優妃氏とコラボレーションしたもの。野村氏がキャンディでできた食べられるストロー「Dlink Straw」のクラウドファンディングプロジェクトを立ち上げ、これに注目したカンロが声をかけて、今回の取り組みに至ったという。
カンロと野村氏は、キャンディとストローという「口」にまつわるプロダクトを展開し、「選択肢を広げる、居場所を作る」「環境への配慮」「”キャンディ“という素材に対するポテンシャルの認識」を共有、その結果生まれたのがカンロの飴で作った「キャンディストロー」だ。
このストローは飴で作られているため、強度を保てるようにやや口径が大きくなっている。実際にキャンディストローで水を飲んでみると、飴の風味をかすかに感じることができる。またそのままドリンクにつけておくと、飴の成分が溶けだして、違った風味を楽しめたり、飲み終わった後にはストローそのものを食べて楽しむこともできる。
残念ながら、キャンディストローの商品化はまだ未定。今回のサンプルは手作りで、商品化するためには大量生産するための方法、体制づくりが必要だという。
「糖の可能性」を広げることを目指すカンロ、どんなサステナブルな取り組みを行うのか、今後も楽しみだ。