あかりを使ったアート展「和のあかり×百段階段 2019」が、7月6日から9月1日まで、ホテル雅叙園東京の東京都指定有形文化財「百段階段」にて開催されている。今年で5回目となる同展は、累計来場者数31万人を超え、海外でも注目を集める、東京の新たな夏の風物詩とも言われている。
そもそも「百段階段」とは通称で、ホテル雅叙園東京の前身である目黒雅叙園3号館にあたり、1935(昭和10)年に建てられた現存する木造建築。99段の長い階段廊下が7部屋を繋いでおり、各部屋の天井や欄間にはには鏑木清方など当時屈指の著名な画家達の作品が描かれ、”昭和の竜宮城”と呼ばれた当時の目黒雅叙園の趣を現代まで残している。
2009(平成21)年3月には東京都の有形文化財に指定されていて、そんな歴史ある建造物を使ったジャパニーズイルミネーションアート展だけに、国内外から多くの人が足をはこぶのも当然だろう。今年は内容も刷新し、青森、宮城、山口、広島、鹿児島、宮崎など九州7県より、40にも及ぶ個人・団体が集結している。
「和のあかり×百段階段 2019」に実際に足を運んで観て頂くのが一番だが、その作品と魅力の一端をお目にかけよう。
「十畝の間」は竹廃材を使い幻想的なあかり
荒木十畝(1972-1944)による四季の花鳥画が描かれた「十畝の間」では、竹あかり作家 NITTAKE氏による作品を展示。環境問題「放置竹林」をアートで解決しようと活動する人物。今回は「都会の中に生まれたオアシス~夏の涼しさ~」をコンセプトとして、放置竹林の竹を使い、幻想的で柔らかい都会のネオンのようなあかりを創り出している。また今回使われた竹は竹炭にしてリユースするという。
NITTAKE氏の作品そのものも素晴らしいが、荒木十畝の作品をこの“あかり”が照らし出す姿は必見だ。
「漁樵の間」×長崎ランタンフェスティバル
「漁樵の間」は室内はすべて純金箔、純金泥、純金砂子で仕上げられ、床柱には精巧な彫刻で中国の漁樵問答の一場面が施されている。格天井には菊池華秋原図の四季草花図、欄間には尾竹竹坡原図の五節句が極彩色に浮彫。そんな豪華絢爛さにふさわしいのがこの展示だ。
長崎の冬の一大風物詩「長崎ランタンフェスティバル」とコラボし、「竜宮城」をテーマに、極彩色のランタン(中国提灯)と大小さまざまなオブジェで部屋を照らし出している。純金仕上げや精密な彫刻と、巨大な龍のオブジェは圧巻。また龍のまわりの金魚や鯉もきらびやかさに華を添えている。鯉の顔も可愛らしい。
「草丘の間」では山鹿灯籠浪漫・百華百彩
礒部草丘(1897-1967)の四季草花絵が格天井や欄間に描かれた部屋。こちらにはかつて和傘の産地として有名だった、熊本県山鹿市の冬の祭典『山鹿灯籠浪漫・百華百彩』をモチーフに、和傘や竹を使った作品となっている。「和」をテーマにした切絵、大分県中津市の和傘あんどん、「一葉式いけ花」 家元 粕谷尚弘氏の作品を楽しめる。
またプレス発表会の際には応援にくまモンもかけつけた!(注・イベント開催時にいるわけではありません)。
「静水の間」では伝統工芸をライトアップ
静水の間は池上秀畝(1874-1944)の鳳凰・舞鶴、小山大月(1891-1946)の金箔押地秋草、他にも橋本静水(1835-1908)等の作品が描かれた部屋。この部屋を使い江戸の伝統工芸を飾り、それを美しくライトアップしている。伝統工芸品自体がアート作品であり、同時にそれらが美しく照らされているこの部屋自体も作品となっている。
ここでは江戸の工芸品の普及促進をはかる「東京手仕事」など、同様のプロジェクトに参画する多くの匠たちの作品を見ることができる。
「東京手仕事」の安宅漆工店、印伝矢部、岡半、三弦司きくおか、高橋工房、但野硝子加工所、寺沢ブラシ製作所、畠山七宝製作所、ミツワ硝子工芸、玻璃匠 山田硝子、「えどコレ!」の中金硝子総合、篠原風鈴本舗、「すみだマイスター」かざり工芸三浦など、関東の工芸界ではそうそうたる面々の作品が揃う。
また次の部屋である「星光の間」では、江戸組子や籠染灯籠など、東京のみならず日本の匠の技術の詰まった様々な作品が、暗闇の中で美しく照らしだされている。個人的には、藍染の技術である籠染で使われていた真鍮製の型を内照式オブジェにした「籠染燈籠」、これはぜひ観て頂きたい美しさだ。
この二間では、伝統の技法を新たな感性で表現されており、訪日外国人のみならず日本人客も驚嘆させること間違いないだろう。
「清方の間」では和のあかり展の人気作品が集う
美人画の大家、鏑木清方(1878-1972)による四季草花、四季風俗美人画を観られる「清方の間」。山口県柳井市の「金魚ちょうちん」をはじめ、石巻の新しい特産品として作られた「石巻こけし」や「草木のあかり」などキッチュな展示が目白押し。照明塾・橋田裕司氏によるカエルのあかり、こけし作家・林貴俊氏のこけし作品など、これまでの和のあかり展でも人気の高い作品が集まっている。
鏑木清方の美人画と、現代的な可愛らしさを表現した作品のコラボレーションの妙を、ぜひとも楽しんで頂きたい。
「頂上の間」は砂を使った不思議な作品が
松岡映丘(1881-1938)とその門下の共同作品で飾られた「頂上の間」では、清水友絵氏、須田江梨香氏によるサンドアートデュオemullenuett(エミュレヌエット)による、砂を使った儚い不思議なアートを楽しめる。天井に映し出される映像では即興で描かれる、幻想的な砂絵が楽しめる。また思わずくすっと笑ってしまうユーモアのあふれた、入江千春氏のあかり絵もぜひともチェックを!
いよいよ梅雨明けでだんだんと暑くなってきた日本列島だけに、この涼しげで幻想的な和のあかりを楽しんでみてはいかがだろうか?
<「和のあかり×百段階段2019~こころの色彩~」概要>
■開催期間:2019年7月6日(土)~9月1日(日) ※会期中無休
■開催場所:ホテル雅叙園東京 東京都目黒区下目黒1丁目8−1
■開催時間:日~木曜日10:00~17:00(最終入館16:30)
金・土曜日および8月11日~18日 10:00~20:00(最終入館19:30)※ 8月10日は17:00迄
※全作品写真撮影可能(三脚・フラッシュ・商用撮影NG)
■入場料:当日 1,600円、前売 1,300円、大学生・高校生 1,200円、中学生・小学生 600円 ※要学生証呈示、未就学児無料
■時間&定員スペシャルチケット 1名様 2,000円 / 定員 1回20名様 ※なくなり次第終了
■実施日 7月7日~8月29日の日・火・木曜日 ※8月11日~15日は除く
■販売場所 本展公式ホームページ内 公式オンラインチケット https://www.e-tix.jp/100event/#akari
■イベント公式URL https://www.hotelgajoen-tokyo.com/100event/wanoakari2019