学歴と寿命に相関関係がある、こんな研究が発表されて波紋を呼んでいる。学校教育を早くにはなれることは、喫煙と同レベルで、健康に悪影響があるというのだ。とはいえ経済的事情などで学びたくとも学べない人たちもいるわけで、デリケートな問題だ。
■14万5千人の死亡者は、高校卒業していたら“死なずにすんだ”?
コロラド大学デンバー校の研究者らが、1986年から06年までの健康調査データをもとにリサーチを行った。その結果算出したのは、2010年におけるアメリカでの25歳から85歳の死亡者のうち、145000人は、もしも彼らが高校教育を最後まで受けていたら、その死を防げたかも知れないという衝撃的なものだ。
この数字は国中の喫煙者たちが禁煙したら、防げるかも知れない死亡者数に匹敵するものだという。調査結果は「the journal PLOS ONE」に発表された。
■学歴と健康問題はつながっている
高校教育を修了できなかったことが直接的で致命的なリスクを生じさせるわけでは、もちろんない。ただ、間接的にではあるが“寿命を縮める”相関性が認められたということ。病気などに対応できる経済的余裕、余裕ある生活から生まれる精神的充足、健康的な生活をおくるための知識や行動、そういった要素が、相対的に欠けるといったことから、生じるようだ。
■教育格差の是正が必要
同研究のメンバーの一人、パトリック・クルーガー氏(Patrick Krueger)は、「我々の調査結果は、教育体制の改善を政治的に行うことが、アメリカ人の生存率を改善することも示しています」と言っており、教育格差が広がっているなか尚更だとのこと。現在アメリカの25歳から34歳の成人では10%以上が高校教育を修了できていない。
調査チームのメンバーは「すべての人が高い水準での教育を受ける必要はないと思っているが」とも言っている。この研究には「行きたくとも行けなかった」といった反論も見られるが、あくまで相関関係を明らかにしたものであり、研究チームは行政に対し、全ての人が高校教育を修了できるようにすることを求める姿勢だ。
文/高野景子