浜松市とはげしいギョウザ消費量のバトルを繰り広げている栃木県・宇都宮市。2014年の世帯あたりの購入額では浜松市に敗退、昨日の朝日新聞記事「ギョーザ1位争い、宇都宮『もうやめる』」によれば、同市の餃子会は、消費量から市民の“愛ギョウ心”育成へと変更するという。
だが本誌が取材したところ、一部の宇都宮市民はこういった動きにはひややか。「ギョウザに疲れた」と語っている。
■ギョウザによる家族の離散も
「うちの両親みたいな、地元愛のある年配の人たちは“郷土のためにギョウザを食べよう”なんて言っていますが、巻き込まれる家族が大変。明日がデートだって言ってるのに、ギョウザを平気で食卓に乗せますから。妹なんてギョウザ食べさせられるのがイヤで、東京に出たぐらい(笑)」(銀行員 男性 25歳)
みなが好んで食べているならばそれはけっこう。だが押し付けられて食べるのは、ちょっとつらい。
■ギョウザ愛に狂った家族
「父親も母親も『浜松なんてウナギにあきたらず、ギョウザまで。節操ない』なんて浜松をディスってますね(笑)。みんなでものすごくギョウザを食べるんですが、もはや美味しいからとか、味じゃないんですよ。浜松に負けるなという維持で食べている」(男子大学生 21歳)
強すぎる郷土愛が、ギョウザナショナリズムとでも言うべきものを作っているケースもあるようだ。味のためではなく、郷土のためにギョウザを食べる、なかなか想像できない話だ。
話を聞いた男子大学生や銀行員の彼らは、「ギョウザ疲れ」のため、外食では絶対ギョウザを食べないという。
■ギョウザ疲れする若い世代
これらのケースは極端だが、20歳前後の若い世代に話を聞いてみると「自己紹介で出身地を言うと、いつもギョウザの話をされてウザい」「他県出身の彼女に、口がギョウザ臭いって冗談で言われて傷ついた」「同じ栃木でもラーメンで知られる佐野が羨ましい」「ドラマの舞台になった下妻に憧れてる。ギョウザはもう(笑)」といった声がつぎつぎと。
とはいえ、宇都宮市にとってギョウザは重要な観光資源。多くの市民の生活への経済効果も大きい。そういった実生活を考えていない若い世代だからこその意見でもあるだろう。
マスメディアで「消費量1位」などとおだてられている土地には、人知れぬ苦悩があるようだ。
文/鷹村優