「池波正太郎が通った店」は大体マズい? グルメ業界の意外な常識

※画像は『池波正太郎の食まんだら』は良書です。イメージです、本文とは関係ございません。
『鬼平犯科帳』『剣客商売』など知られる小説家・池波正太郎は食通だったことでも知られている。だから池波随筆にとりあげられた飲食店などの店先には、「故・池波先生も愛した…」なんて張り紙があって、ついつい入りたくなる。だがグルメ雑誌編集者はこれに警鐘をならす。

「いや、かなり気を付けて入った方がいいですよ、池波先生うんぬんという店には。僕らも話の種や仕事としては行きますが、プライベートで行くという人はいないんですよね…」

たとえば池波の行きつけだった銀座の資生堂パーラーなんて高級なのでしょっちゅは行けないが、いい店だと思うのだが。

「当然、池波先生の行きつけだったお店で資生堂パーラーのようないい店もたくさんあります。ただ一部の店、先生が通っていたというウリにあぐらをかいてきたトコがけっこうある。接客は悪い、店は汚い、味の研鑽していない。でも『昔ながらの味』、『風情』なんて安い言葉でごまかしている店、ぼちぼちあるんですよ」(前出・編集者)

またグルメ雑誌を主戦場にするライターにも話を聞いてみたところ、同様の話をしてくれた。店員が偉そうだったり、美味しくないのに高かったりする「池波正太郎が愛した店」はやっぱり多いとのこと。

「池波ファンなんかが、そんな店のまずい味、ひどいサービスにもかかわらず、『ぶっきらぼうだけど、江戸時代の情緒が残ってるからなんだろう』なんて食べているのをみると、本当にかわいそう。薄々『イマイチ』ってわかっているんでしょうが、ファンとしては『先生、こんな店に来てたのかよ』とは思いづらいでしょうからね」(ライター)

たしかに筆者も横浜方面で先生が行きつけだった店に入ったところ、あまりの接客の悪さにびっくりしたことがあり、ファンだった自分としては残念な気持ちになった。あくまでほんの一部の店ではあるのだが、皆さんも『池波先生が愛した店』にはご注意を。そして一番の被害者は、池波正太郎先生なんでしょうね…。

文/田中結子

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