一般ユーザーが投稿し、さまざまな飲食店の「格付け」を行うインターネットサービスが多数存在する。筆者のまわりにも数人いるのだが、みな恋愛方面はイマイチで「いい店に連れて行ってるんだけど…」とこぼしている。これから紹介するのはそういったサイトで投稿数も多く、人気のあるレビューアーだ。
「僕がデートに使うのは、どれもそういったサイトで高得点のところばかり。待ち合わせにする時には、事前に僕が書いたレビューを送っていますね。それを読んでおくとお店への期待も高まると思いますし、何を頼んだからいいかもわかるはず」(保険会社営業のA君、30代)
彼は柏原崇をほうふつとさせるイケメンで、女性からデートに誘われることも多いのだが、食事をした後に女性から距離をとられてしまうことが多いという。
彼と一ヶ月だけ交際していた共通の知人女性に別れた理由を聞いてみたところ「今日のこの感じだと味では◯◯点、だけどサービスが落ちて◯◯点。ちょっと評価変えなきゃなとか、超うざい。上から目線なんですよ」とのこと。
たしかにいいやつではあるのだが、そういったところは鼻につく。また女性の投稿者も同じようにモテないのだが、これは自ら男性をも格付けしてしまうというパターン。
「グルメ格付けサイトで5ポイント満点中3.5以下の店に連れて行かれるとブチ切れますね。先付けをちょっと食べて、それで笑顔で『もう出ましょうか?』って嫌味を言ってますね。私のことをデートに誘ったなら、せめて私が高評価していた店や、まだ行っていないけど高評価しそうな店にするべきですよね」(外資系金融コンサルのBさん、30代)
彼女も見た目は佐藤江梨子風の美人だが、食に対する気位が高すぎて、恋愛生活は上手く行っていないようだ。
こういった有名素人レビューアーを使ってグルメ企画を行った編集者に聞いてみたところ、
「やっぱり勘違いしちゃってる人が多いんですよね。いつの間にか自分も海原雄山やミスター味っ子の味王にでもなったような人が多い。僕はまずかったら『ごちそうさま』と絶対に言わないなんて得意げに言ってる人までいましたよ。ものすごい数のレビューを書いて投稿る人たちって、どこかがおかしいんですよ…」
という。食べる楽しみから、評価する楽しみへと移行してしまった人たち、彼らは本当に「美味しい」という体験をしているのだろうか?
文/田中結子