「讃岐うどんブームで観光客が押しよせた影響で、うどん屋からの汚水が増えたでしょ。しまいには川の魚からうどんの味がするようになった、なんて笑えない話もあるんですよ」(香川県県庁関係者)
うどん県として知られる香川県だが、かつてその水質環境汚染は深刻だった。うどん屋からの汚水が河川に直接流れ込んでいたからだ。同県は下水道の普及率が2000年後半でも60%、またうどんの店の大多数は零細企業に該当し、排水規制がかからなかった。そのため下水道の無い地域では、高濃度のデンプン質を多く含むうどんのゆで汁が、浄化装置を経ずに放水されていたのである。また天ぷらやだし汁も汚染に一役かっていた。
「酷い時ではうどんが川にしずんで腐って臭いにおいを出していた。うどん屋は天国だったが、漁師や近所の人間からしたら迷惑でしたよ。他県からの観光客で『香川は川までうどんの匂いがする』なんて言ってる人もいましたが、本当にたまりませんでしたよ」(有名店の近隣住民)
そうした問題をうけ、県ではうどん店に排水処理対策マニュアルを配ったが、大きな改善は見られなかった。しかし現在では小規模店舗にも設置したコストの低い排水処理装置の開発や、罰則を含んだ規制条例施行に向けた動きを行っている。こういった動きや、うどんブームが一段落したこともあり、現在では改善も見せているが、まだ完全解決とはいかないようだ。
文/田子勇作