海の家の一番人気だったラーメンが凋落
海の家3大料理といえばラーメン、焼きそば、そしてカレー。海水でしょっぱくなっている口には、これらのシンプルなジャンクフードがよく合ったし、風情でもあった。しかし、中でも王座に君臨していたラーメンがいま絶滅の危機にあるという。
「地方ではそこまで減っていませんが、湘南や千葉の方では、海の家でラーメンを食べることがかなり難しくなってきましたね。というのも、最近は海の家も様変わりして、おしゃれなダイニングやカフェバースタイルのものが増えた。そういう店は料理もそれ風に見せようとするので、ラーメンや焼きそばは出さないんですよ」(海浜観光事情に詳しいライター)
たしかに、最近ではエグザイルか半グレ風のあんちゃんたちがたむろする、おしゃれな海の家が増えてきており、我々のようなつつましい一般人は入りづらいところも多い。
おしゃれ海の家がラーメンを滅ぼした?
「海の家は利益率も高いのと、プロモーション効果もあるために、最近では企業が手がけることも多くなりました。avexなどのレコード会社やテレビ局が運営する海の家もある。さすがにそういうところではラーメンや焼きそばみたいな“しょぼい”と言われそうなものはありませんね。一見豪華に見えるが実は原価が安いロコモコ丼とか、一応おしゃれ風なメニューがはびこっています」(前出・ライター)
このライターが調べたところでは、湘南、千葉地区ではラーメンを出している店が、すでに1割を下回っているという。
ダサいと海の家のラーメンを嫌がる客も
「海水浴のお客さんも、最近じゃあラーメンをあんまり頼まなくなってますね。うちみたいな、ござのひいてあるような古い感じの店で、ダサいものを食べたくない、ってことなんでしょうね」(江ノ島の老舗海の家のオーナー)
とはいえ、海の家のラーメンがそこまで恋しいかと言われると、そこまででもないのかも。ああ、インスタントチックな味だなあ、これで700円は高いなあ、カレーにしておけばよかったかなあ、なんてちょっといつも後悔しながら、筆者も食べていた記憶がある。しかも海水で口が塩っ辛くなっているから、スープの味もわかりにくかったり。
うーん、でもそういう微妙なことを思いながらも、気だるくしみじみ食べるのも、味のうち。やっぱり海の家で食べるのはラーメンなんかのシンプルで素っ気のないものがいいのかも。海からあがってロコモコ丼しか食えなくなったら、ちょっとさみしい話だよなあ。
文/小山田アツシ