PB隆盛の陰で……
コンビニやスーパーなどで多く見かけるようになったPB(プライベートブランド)商品。お手頃な価格設定や、パッケージの統一感などが好感触で、各社とも売り場の主力となるまで育ってきている。この状況に危機感を抱いているのが、NB(ナショナルブランド)商品を扱うメーカー各社だ。
NBを扱う酒類メーカー関係者はこう漏らす。「以前は、ライバルといえば他のメーカーさんの商品。人気も拮抗していたから、小売さんは売り場を均等に用意してくれてました。でも今はPBが棚の大半を占めて、端っこの方を僕らメーカーの商品で取り合っているような状況ですよ」
直販という仕組みがある程度浸透してきた今でも、やはり小売での売上が主力であることに変わりはない。土俵に上がらないことには、勝負自体に参加できないのだ。
PBは企業間の力関係も変えた
厳しいのは売り場スペースだけではない。
「PBが安いもんだから、みんなそっちを買っていくでしょう。すぐそばに並んでいる僕らのも、これまでの価格ではどうしても売上が落ちてしまう。PBに合わせて安くせざるを得ないんですよ」(前出の酒類メーカー関係者)
それまで、商品の価格はメーカー主導で決められていた。ところが、PBという小売側で価格を決められる商品が登場したことで、主導権が小売に移ったというのだ。この主導権というのは、単なる商品VS商品ではなく、企業同士の力関係にも変化をもたらしている。
「昔はむこうから発注してきていたのが、今はこれだけ置いてくださいよ、と頭を下げてますからね。別にこれまで見下していたわけではないですけど、やりづらいというのが本音ですよ」(同)
共同開発という名の下請け
そうしたなかでメーカーが活路を見出しているのが、大手小売との、PBの”共同開発”。長年の製造ノウハウを生かして、PBを作る側に回るというものだ。共同なのでもちろん単位あたりの利益は減るが、毎月まとまった量の発注があるため経営が安定するなどのメリットがある。とは言え、不満が無いわけではない。
「私らみたいな中小メーカーの場合、共同開発というよりは下請け。社名とかロゴが表にバーンと出るようなのは大手メーカーだけで、ウチなんて、後ろの製造者の欄に社名がちょろっと書いてあるだけだから、なんだか子会社になったみたいで何ともいえない気持ちだよね」(食品加工メーカー幹部)
自社のパッケージで売るのに比べると、PBを作るのは、どうしてもモチベーションが上がらないのだという。
「このご時世に贅沢な悩みなのかもしれませんが、やっぱり自分たちはこういう商品を作っている、そして商品を通じて、たくさんの消費者のみなさんが私たちの会社を知ってくれている、という自負は大事ですよね」(同)
PBという”発明”は、仕事への誇りという、働く者の内面にまで変革を迫っている。
文/林田卓夫