ホーム メディア 一色萌のアイドル、色々。第 34回「アイドルと転生」

一色萌のアイドル、色々。第 34回「アイドルと転生」

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一色萌のアイドル、色々。第 34回「アイドルと転生」

こんにちは。プログレアイドル・XOXO EXTREME(キスアンドハグ エクストリーム。通称・キスエク)の一色萌(ひいろ・もえ)です。

気づけばもう5月。桜が咲いたと思ったらあっという間に散ってしまいました。

桜を見ると幼い頃に、橋の下で猫の死骸を見つけたことを思い出します。
花びらで一面覆われた小さな川のほとりで、その猫は何かに飛びかかるように大きく口を開け、爪を剥き出しにした状態で、ほとんど白い骨になっていました。
身近な生き物の骨を初めて見て、猫って死ぬんだな、と思ったのをよく覚えています。

そんな思い出があるので、「桜の木の下には死体が埋まっている」という言い回しも妙に現実味のある言葉に聞こえてしまいます。

春はいつも、なんだか忙しなく過ぎていきます。ですが今年の春は少し変な感じで、まるで一年前の春の続きのような感覚がありました。

世界がコロナ禍に陥り、ライブ活動が思うように出来なくなってから、一年。
アイドルの世界における時間は基本的に濃密なものですが、この一年はちょっと例外的で、色々あったけれど現実感がないような、それまで身近だったはずのアイドルさんに関するあれこれが少し遠くの出来事に感じるような、そんな期間でした。

4月の頭、かねてから出演を目標にしていたイベントのひとつであった『ギュウ農フェス』に一年越しに出演することができました。
もちろんそれはとても嬉しいことだったのですが、それと同時に延期になってしまった時に感じた悔しさも蘇ってきて、“一年経ったこと”を実感する出来事でした。

昨年の春に告知されていたよりも出演者数を大幅に減らし、いくぶん小さな規模での開催にはなりましたが、それでも今年リベンジ開催ができたという事実。
そこには、このような情勢下でもアイドルにはできることがまだある、という希望を改めて見出せるような昂りがありました。

そうやって2020年とその先を繋げる「意義」を少しずつ見つけていってあげることでいつか、この日常からぷっつりと切り離されてしまったような一年間もつらい・悲しい思い出だけではなかったと、慈しめる日がくればいいなと思っています。

私の『ギュウ農フェス』に対する想いはツイッターなどでも何度か明かしたことがある上、話が長くなってしまいそうなのでここでは割愛しますが……、自分が以前からよく足を運んでいたイベントに演者としてお呼ばれするということは、アイドルヲタク・アイドル冥利に尽きるというか、とにかく大変に光栄なことです。

そして久しぶりにたくさんのアイドルさんと共演したことで、この一年の間に変わったこと、新しいもの、積み重ねてきたもの、嬉しかったことも悲しかったことも、色々と気付かされたような気がしています。

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アイドル活動をしていると時折、憧れのイベントに出演できたり、好きなアイドルさんと共演する機会に恵まれることがあります。

ついこの間までファンとして応援していた方々と自分が同じ楽屋にいる、というのはいつまで経っても慣れなくて、何度目でも新鮮に緊張してしまいます。

私はアイドルになるまでにずいぶん時間がかかってしまった人間なので、いつか共演したい!と夢見ていたグループが既に解散してしまっていたり、メンバーさんがすっかり入れ替わってしまっていたりすることがよくあります。
また、憧れのアイドルさんとご一緒できた時には私がかつてよく見ていたグループとは別の所属になっていた、なんてこともあります。

ここ数年、新しいグループが出来るとき、もしくは既存のグループに新メンバーが入るとき、ファンの間では「この子に前世はあるのか?」という話題が、必ずと言って良いほどの頻度でどこからともなく巻き起こります。

「前世がある」とは要するに「以前アイドル活動をしていた経験がある」ことを指し、一度一線を退いてからまたアイドルとしてステージに戻ってくることを「転生」と言い表したりもします。

アイドルヲタクが応援活動をやめる際に「他界」という表現を使う例もあるように、なんだか死生に関わる単語がよく登場するアイドル界ですが、アイドルが引退することを「他界」と表現することは滅多になく、逆に一度ファンを卒業してからまた別のアイドルのファンになることを「転生」と表現する場面もあまり見たことがないという点は面白いなと思っています。

「他界」するのはヲタクで、「転生」するのはアイドル……。
個人的には、アイドルとしてのキャリア/アイドルヲタクとしてのキャリアのそれぞれを地続きのものとして見なすかどうか、という無意識の区別がこの言葉の使い分けに関わっているような気がしているのですが、確信を持てるほど「他界」の場面に遭遇したことがないので、この説にはまだ検討の余地がありそうです。

ともあれ、現実世界にもネット上でもあまりにも多くのアイドルがひしめき合う時代、もうすでに活動しているグループの新メンバーは即戦力が求められる分、アイドル経験者が採用されることが多くなっているように感じます。

何度も加入や卒業を繰り返すのはファンの方のことを慮ればあまり良くないことだと思います。
それに私はどちらかといえば元来「続ける」ことの美しさを尊重したいという考え方を持っているので、活動を転々とすることにはもともと否定的でした。

しかしそういったことも事情によっては“あり”と思えるようになったのは、自分がアイドル活動をするうちに「転生」したのちにのびのびと活動できる場を見つけて、より自分らしく輝くアイドルさんを見る機会も少なからずあったから、かもしれません。

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以前の活動からガラッとイメージを変えて「転生」し、自身の活躍の場を広げることに成功しているアイドルさんを見ると、自分も同じような状況になったらあんな風にできるだろうか、と思うことがあります。

私は長年にわたり沢山のオーディションを受ける中で、何十回も「自分がそのグループに入ったら」というイメージをしてきました。
そのせいか、アイドルさんのステージを見て「いいなぁ」と思ったら、その次の瞬間には「自分ならどんな風に歌って踊るかな」と考える癖がついてしまいました。

あの中に入るならきっと髪は長いほうがいいとか、カラコンは大きい方が良さそうだとか、歌声はこのくらいの高さがいいとか、スカートよりパンツの衣装がいいなとか、かなり具体的なところまで考えることもあります。

しかし結局のところ、自分にどんな雰囲気のアイドルが合うのか、どんな場所なら自分を求めてもらえるか全くイメージがわかず、わからないままオーディションを受け続けて落ちまくることになったので、私の想像力はあまりアテにならなそうです。

私は最終的にキスエクに合格して、“プログレアイドル”というちょっと変わったアイドルをやることになったけれど、もしかしたらゴリゴリのロックを歌っていたかもしれないし、キラキラの正統派だったかもしれないし、ラップをやっていたかもしれないし、アクロバットをしていたかもしれないし、どこかのご当地アイドルだったかもしれません。

どこかのタイミングで何かが少しでも違っていたら、きっと今ここに私はいないと思うと、不思議な気持ちになります。

アイドル活動を始めた当初、ひとつのグループに打ち込んでアイドル人生を全うするのと同じくらいの覚悟で、不測の事態に見舞われてグループを転々と「転生」していく未来があるかもしれない、という心の準備もしていました。

恵まれたことに私は自身の進退に対する大きな不安を感じることはなく、現在活動5年目に差し掛かっています。
「もしもあのグループに入ったら……」という妄想は今でも頻繁にしますが、現実的に考えたとき、今からかわいい曲を歌う王道アイドルに自分がなれるとは、正直、露ほども思えません。

きっと私の居場所はここで、もしも過去のどこかで違うところで生きることになっていたとしても、何度か「転生」をしてここに辿り着いていたのではないかという気持ちになるのです。

もし、これから先もこの気持ちのままいることができるのなら、私はなんて幸せなのでしょう。

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梶井基次郎は桜のこの世のものとは思えぬ美しさを、根元に死体が埋まっているのだと信じることで納得しようとしました。

ここから先は言葉遊びと思って聞き流していただければ幸いなのですが、枝いっぱいに桜色の生命力をみなぎらせる姿が「死」を源に生まれたものとするのなら、その華麗な「転生」を、私はどうしてもアイドルに重ねてしまいます。

アイドルは引退しても卒業しても決して「死」んではいないし、言葉に引っ張られていると言えばそれまでですが。

でもきっとその子が「転生」を遂げるまでには、それを経験していない私たちには知り得ない沢山の事情や葛藤があるはずで、それらを乗り越えた上でまたステージに戻ってくる日が来たとしたら。

やっぱりその時には桜のように堂々と咲き誇っていてほしいなと、いちアイドルファンとして願ってしまうのです。

【プロフィール】 一色 萌(ひいろ もえ)

ニックネーム:萌ちゃん、萌氏、誕生日:5月27日、出身:東京都、血液型:A型、趣味:アイドル研究、特技、アイドルについて話すこと

WALLOP放送局「キスエクのギュッと!プログレッシヴ!」レギュラー出演中(2018.4〜)

<一色公式Twitter> https://twitter.com/hiiro_moe

<公式Twitter> https://twitter.com/xoxo_extreme

<公式YouTubeチャンネル> https://www.youtube.com/channel/UCA7fn3DZFJGDmlxZZg8WQVA

【活動情報】

一色萌(ひいろもえ)
デビュー7インチ・シングルレコード
「Hammer & Bikkle / TAXI」発売中

XOXO EXTREMEの一色萌が遂にソロデビュー!20年代のパブロック/パワーポップ/モダンポップを追求するNEWアイドルの誕生!佐藤優介Proによる「Hammer & Bikkle」とデフ・スクールの名曲「TAXI」を日本語詞でカバー。何と本家デフ・スクールがバックトラックを新録した奇跡の日英コラボによる7㌅シングル

価格:1,500円+税
レーベル:なりすレコード
品番:NRSP-789

詳細はこちら!
https://upluslive.udo.jp/schedule/20201127.html

<取材・オファー等> Email : contact@twelve-notes.com

【グループプロフィール】

XOXO EXTREME(キス・アンド・ハグ・エクストリーム 通称:キスエク)

一色 萌・小嶋 りん・浅水るりの3名からなる、プログレッシヴ・ロック(略:プログレ)※をモチーフとした楽曲をパフォーマンスしているアイドル。
※特徴として、曲調がよく変わる・曲が長い・変拍子が多い、といった点が挙げられる。

2017年に、発売したシングル「えれFunと”女子”TALK〜笑う夜には象来る〜」に対して(キング・クリムゾン「エレファント・トーク」オマージュ)元キング・クリムゾンのエイドリアン・ブリューがその動画に「I like it!」とコメントで絶賛。

ライブ活動の他、ディスクユニオン新宿プログレ館で一日店員を務めたり、プログレファンの聖地である吉祥寺シルバーエレファントに、アイドルとして初出演。

2019年にフランスを代表するプログレバンドMAGMA公認カヴァー曲の「The Last Seven Minutes」を初披露。その動画がyoutubeにアップされると、カヴァーを公認したMAGMAが、公式Facebookで紹介したこともあり、一日で2000以上の再生数を得て話題になる。
翌2019年には、日本のプログレバンドの雄、金属恵比須とのコラボレーションで、90年代プログレを代表するスウェーデンのバンド、ANEKDOTENの「Nucleus」を公認カヴァー。

同年7月25日には2バンドを擁してのセカンドワンマンライヴを渋谷WWWにて行った。

都内を中心にライヴ活動を行なっており、プログレッシヴ・ロックを知っている人も知らない人も楽しめる、と好評を得ている。